大学院紹介

メッセージ

研究科長からのメッセージ

岩手医科大学大学院歯学研究科は、北東北の歯学医療の教育拠点として社会への貢献を使命とし、高度な専門知識と多面的な能力を併せ持ち、専門家としての豊かな倫理観を有する医療人・歯学教育者の育成を目指しています。昭和58年(1983年)に開設されて以来、博士(歯学)の学位が授与された者は350名を超え、地域医療発展のために先導的役割を担ってきました。

歯学研究科では、生命科学研究における体系的な知識や研究能力を修得のために、大学院共通教育プログラム、基礎教育特論、臨床教育特論を履修していただきます。また、指導教員の下で研究課題に即した研究指導および高度臨床技能指導を受け、研究者として自立して研究活動を行う能力と高度臨床技能、その基礎となる豊かな学識を身につけていただきます。本研究科で行える研究領域は基礎歯学分野、社会歯学、臨床歯学分野と歯学全般をカバーしており、19の専攻別学科科目から主たる科目を専攻し履修を進めます。所定の科目を履修して研究科の定める単位を修得し、さらに独創的論文を提出して論文審査および学位論文を中心とした最終試験に合格した者に対して博士(歯学)の学位が授与されます。

さて、歯学研究科(大学院)に進学し歯学の中でもさらに細分化された専門分野を学ぶことで得られるものは何だと思われますか。以下の5つの項目が大学院での履修を修了することで身につく能力と考えています。

岩手医科大学大学院
歯学研究科 研究科長

小林 琢也

1.高度な専門知識と技能の習得

大学院での学びを通じて、特定の分野における最新の理論や技術を調べる能力を身に着け、深く理解し、実践応用する能力を身につけることができます。これは、歯科医師としての専門性を高め、他の歯科医師との差別化に繋がります。

2.問題解決能力の習得

大学院では、指導医の下で独自の研究を計画・実行し、成果を学会発表や学術論文発表を通じて発信する能力を養います。これらの課程を経験することで、問題解決能力や物事の本質を捉え判断し、あるべき方向に導くクリティカルシンキングのスキルを身につけることができます。

3.企画能力・統括能力の養成

大学院では、自身の研究を遂行するだけではなく、様々な研究プロジェクトの一員として、プロジェクトの企画・運営に携わり学ぶ機会が提供されます。これにより、組織やプロジェクトを効果的に管理する能力が身につき、自身での企画能力とチームを統括する能力が高まります。

4.歯科医師としてのキャリアの選択肢が広がり

大学院を修了して与えられる学位である博士(歯学)は、大学院卒業後のキャリアの幅を広げます。多くの人が専門的な臨床歯科医師としてのキャリアを選択しますが、例えば、研究職や教育職、行政職、海外大学での働きに繋がるなど、学部卒では難しい職業に就くことも可能になります。

5. 職業倫理と社会的責任の理解

大学院では、研究倫理や社会的責任について学び、専門家としての倫理観を養います。これにより、倫理的な判断を下し、社会に貢献する意識を持つことで、患者、スタッフ、周囲の人から信頼される歯科医師となります。

大学院で専門分野を学ぶことにより得られるこれらのアドバンテージは、キャリアの発展や専門性の向上において大きな利益をもたらしてくれることでしょう。大学院で学ぶ4年間は自分への投資です。歯科医師としてのしっかりとした根幹を築き、様々な壁を自身で乗り越え、生涯成長し続けることが出来る歯科医師になりたいと希望する貴方には、大学院への進学は価値あるものだと思います。
歯学研究科は、歯科医療や研究を通して患者や周囲の人達のことを幸せにしたい方、地域医療の発展に貢献したい方、歯科医師として一流を目指す方々のご入学を心から願っております。

研究科教務委員長からのメッセージ

〜大学院で研究の国際デビューを果たそう!!〜

本学の歯学研究科委員会は、大学院歯学研究科入学試験の実施に係る業務や、大学院のカリキュラムの運営に係る業務、あるいは、博士(歯学)の学位審査に係る業務などを担当する組織です。とくに、本学大学院歯学研究科では、大学院生の研究面での国際デビュー(国際学会や国際研究誌での研究発表)を果たせるように、大学院の授業の内容を充実させて、本学歯学部の学生の皆さんの入学をお待ちしております。とりわけ、最近の本学大学院歯学研究科の博士課程修了者の学位論文が英文である割合は、非常に高くなっております。2022年度には、博士課程修了者13名中11名、2023年度には、6名中6名の学位論文が英語論文として、全世界に発信されました。これは、過去2年間で19名中17名と、9割近くの大学院生が、英語論文の発表により博士(歯学)の学位を獲得したことになります。このくらいに高い率で、大学院生が国際デビューを果たしている医学・歯学系の大学院は、国内では決して多くは見つからないことを歯学部学生の皆さんは、ご存知でしょうか。また、素晴らしいことに、大学院生の皆さんが、これから作る英文での学位論文がWEBで公開された途端に、世界中の多くの研究者が興味を持ってそれを読んでくれますし、自らの研究の方向性を考える際の参考としてくれます。そして、それらの研究者が英語論文を発表する際には、References(参考文献)として、大学院生の皆さんが発表した学位論文を紹介してくれることになります。また、我々の研究が、どの研究者のどのような研究論文の参考になった(役立った)のかは、今の時代、WEB上の様々な研究成果検索サイトですぐにわかりますので、ご自分で発表された学位論文が、世界中でどのくらいの貢献をしているのかが、日常的に実感できます。

このように、本学歯学研究科の教員は、一致団結して、大学院生の皆さんの国際的な研究活動を応援しています。あなたも、我々と一緒に、日々、世界を意識しながら、研究活動に打ち込んでみませんか?

岩手医科大学大学院歯学研究科 教務委員長

石崎 明

大学院概要

アドミッションポリシー

1.目的

本研究科は、国際的な視野に立って自立して研究活動を行うに足りる高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とし、歯科医学と地域歯科医療の発展に貢献する生命科学研究者及び臨床歯科医師を育成する。

2.学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)

歯学研究科は、国際的な視野に立って自立して研究活動を行うに足りる高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とし、歯科医学と地域歯科医療の発展に貢献する生命科学研究者及び臨床歯科医師を育成します。

大学院歯学研究科の理念と教育目標に則り、所定の教育課程を修了し、以下の各資質を身につけ、学位論文審査に合格した学生に“博士(歯学)”の学位を授与します。

  1. 革新的な歯科医療開発の基盤となる研究を立案するために必要な、基礎、臨床(応用)さらには学際的な分野にいたるまでの、幅広い知識を身につけている。
  2. 最新の生命科学ならびに歯学の情報を分析して新たな課題を現実の問題から見いだし、研究を計画し遂行することができる。
  3. 研究結果を論理的に捉え、自らの思考や判断について的確に記述することができる。
  4. 得られた研究成果の歯科医学における発展性について、論理的に説明できる。
  5. 専門領域の国際学会等で研究成果を発表するためのプレゼンテーション能力やコミュニケーション能力を身につけている。
  6. 歯学研究者として高い倫理性を持って、得られた知識、成果を社会に還元し活かす態度を身につけている。
  7. 高度臨床歯科医としての診断・治療能力を活かした臨床推論を展開し、地域医療の向上に参画する意欲を持っている。

以上の教育成果を達成することができるように博士課程のカリキュラムが構成されています。定められた期間内に所定の講義と実習を受けて(学則第6条と第8条)、高度歯科医療技術者としての知識と技能および態度を身につけることが求められます。また、研究活動で得られた科学的知見を学位論文として提出し、公表されなければなりません。論文の審査と最終試験合格が、学位授与の要件となります。

3.教育課程編成・実施方針(カリキュラム・ポリシー)

博士(歯学)の学位授与の方針を実現するために、幅広い分野にわたる基礎的、汎用的な共通科目と、より専門的なコース科目による教育課程を整備し、体系的な履修を促進します。

  1. 各専攻領域に共通する幅広い素養や自主性、知識・技術を涵養するために講義・演習による大学院共通教育プログラムを設置します。
  2. 情報分析力、語学力、コミュニケーション力等の汎用的な能力を身につけるために、共通基礎科目を必修とします。
  3. 専攻別学科目に加え、とくに優れた研究能力を備えた臨床歯科医の養成を目的として、高度臨床歯科医育成コースを設置します。
  4. 専門分野の知識の獲得を確実にし、研究計画につなげるために、個人別の教育・研究履歴を作成します。
  5. 高度臨床歯科医師として、その専門性を生かして地域医療の向上に参画する意欲を高めるために、高度臨床歯科実習等の科目を配置します。
  6. 歯学研究者として高い倫理性を持って、得られた知識、成果を社会に還元し活かそうとする態度を身につけるための科目を配置します。
  7. 自らの思考、判断のプロセスや研究方法・成果を、論理的に的確に説明することができるように、初期および中間審査を実施します。
  8. 中期審査に合格し、かつ研究論文が雑誌に投稿、採択された学生は、主査副査による一次審査と研究科委員会による二次審査をへて、博士(歯学)の学位を授与します。

4.入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)

本学大学院学則では「医学、歯学及び薬学に関する学術の理論および応用を教授研究し、その深奥を究めて文化の進展に寄与することを目的及び使命とする」と謳っています。歯学研究科では、これを踏まえ、高い研究能力と地域医療の実践能力を有する人材の育成を目指しています。

歯学研究科では、次のような人材を求めています。

  1. 先進的な歯科医学に深い探究心がある人 
  2. 国際的な広い視野に立つ生命科学研究者を志す人 
  3. 高度臨床歯科医師として地域歯科医療の発展に貢献できる人 
  4. 豊かな人間性を持ち、物事に柔軟な対応ができる人 
  5. 常に問題意識を持ち、継続的に自学自習のできる人

多様な人材を募るために、一般選抜と社会人特別選抜試験を行います。

選抜試験では、外国語試験によって国際的な研究水準および研究成果の発信に必要な語学力を有することを確認します。さらに、専門試験によって、先進的な研究に必要な専門領域の知識・技能の基礎的な力の有無を判断します。   なお、入学者の受け入れにあたっては、民族、宗教、国籍、性別および性的指向などを問わず、多様な人材を募集します。

5.評価方針(アセスメント・ポリシー)

本学歯学研究科は、医療研究者として備えるべき資質を学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)に定めて、それに沿ってカリキュラムを構成しています。研究活動を通じて「誠の人間へ成長する」との理念に立脚し、以下の指針に則って評価します。

  1. 研究成果を問う最終審査に至るまで、初期審査と中間審査を設けて、研究企画力と実行力および研究の将来性を段階的に評価します。これは、より良い研究へ発展させるための形成的評価に位置づけられます。なお、これらの審査の結果を踏まえたうえで、主査・副査による一次審査と研究科委員会全委員による最終審査を経て、合否の判断をします。
  2. 演習・講義は15時間をもって1単位修得、実験・演習は30時間をもって1単位修得するものとします。なお、必要な単位数は1年次15単位(主科目10単位、副科目3単位、選択科目2単位)、2年次15単位(主科目10単位、副科目3単位、選択科目2単位)の合計30単位とします。なお、留学して得た修学の成果は研究科委員会でその適切性を審議した上で認めますが、10単位を超えないこととします。
  3. 早期課程修了については、学位論文審査の手引きに添付した学位審査報告書の特記事項欄に「早期修了あるいは長期履修の場合は、その理由を必ず記載すること」と明記することとし、その可否については、大学院歯学研究科小委員会ならびに大学院歯学研究科委員会で協議のうえ慎重な判断をすることとします。とくに学位論文の内容が原著論文として十分であり、且つ短報化していないことを十分に吟味したうえで早期課程修了者として認めます。

6.修業年限

4年(標準修業年限)

ただし、優れた研究業績をあげたと認められた者については、3年以上在学すれば足りるものとする。

長期履修制度について:大学院生が、就業・介護・育児等の事情により4年間で修了が不可能な場合、長期履修申請を申し出ることで修業期間の延長が認められることがあります。

7.履修・単位

学生は、所定の期間内に主科目の責任者の指導を受け、次に定める30単位以上を修得しなければならない。

  1. 主科目  20単位以上(共通教育プログラム、その他の必修科目による単位を含む)  
  2. 副科目  6単位以上
  3. 選択科目 4単位以上

8.学位授与

本研究科に学則に定める期間在学し、所定の科目を履修して研究科の定める単位を修得し、さらに独創的論文を提出して、論文審査および学位論文を中心とした最終試験に合格した者に対して学位を与える。

9.特色ある歯学研究科

高度臨床歯科医療医育成コース

現代の医学・歯学では基礎医学・歯学との垣根が低くなっておりますが、本歯学研究科では患者さんを対象とする臨床研究に比べ基礎研究に主体がおかれる傾向にありました。平成20年度から、優れた研究能力を備えた臨床歯科医の養成を目的とする高度臨床歯科医育成コースを設けることになりました。本コースでは、臨床を科学的な手法で取扱い、外に向けて発表する臨床科学者の養成とEvidence-based Medicineの基礎をなす科学的技術の習得・実践をめざします。

10.昼夜開講による履修及び研究について

本学大学院では、夜間(18:00~21:10)や特定の時間(時期)に授業および研究指導の時間を設け、現在地域医療に携わっている開業医や病院勤務医等の社会人が、大学院の授業及び研究指導をより受け易くするために、昼夜開講制を採用しています。

11.奨学金制度

日本学生支援機構大学院奨学金月額 122,000円
岩手医科大学大学院奨学金月額 25,000円

※その他奨学金制度・・・岩垂育英会奨学金(月額50,000円)、モリタ奨学金(月額30,000円:給付)

学生の募集要項

令和7年度
岩手医科大学大学院歯学研究科博士課程学生募集要項
(一般選抜)(社会人特別選抜)

1.募集人員    18名

入学志願者は、専攻学科目を第二志望まで選ぶことができる。

専攻基礎臨床募集人員
歯学専攻口腔解剖学予防歯科学※18名
(社会人特別選抜を含む)
口腔組織学歯周療法学※
口腔生理学う蝕治療学※
口腔生化学口腔外科学※
口腔病理学冠橋義歯・口腔インプラント学※
口腔微生物学有床義歯・口腔リハビリテーション学※
歯科薬理学歯科矯正学※
歯科理工学歯科放射線学※
法歯学・災害口腔医学歯科麻酔学※
 小児歯科学・障害者歯科学※
 歯科内科学

(※含 高度臨床歯科医育成コース)

2.出願資格

(1)大学(歯学又は医学の学部)を卒業した者及び令和7年3月卒業見込みの者

(2)外国において学校教育における18年の課程(最終の課程は医学及び歯学)を修了した者

(3)文部科学大臣の指定した者(昭和30年文部省告示第39号参照)※

(4)その他、本大学院が大学(歯学又は医学の学部)を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者

※ 文部科学大臣の指定した者とは、次の各号の一に該当するものである。

① 旧大学令による大学の医学又は歯学の学部において医学又は歯学を履修し、これらの学部を卒業した者

② 防衛庁設置法による防衛医科大学校を卒業した者

③ 修士課程を修了した者及び修士の学位の授与を受けることのできる者並びに前期2年及び後期3年の課程の区分を設けない博士課程に2年以上在学し、30単位以上を修得し、かつ、必要な研究指導を受けた者で、本研究科において医学又は歯学の学部を卒業したもの(医学又は歯学を履修した者に限る。)と同等以上の学力があると認めた者

④ 大学(医学、歯学又は獣医学を履修する課程を除く。)を卒業し、又は外国において学校教育における16年の課程を修了した後、大学、研究所等において2年以上研究に従事した者で、本研究科において、当該研究の成果等により、大学の医学、歯学または獣医学を履修する課程を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者

[備考]

① 社会人特別選抜に出願できる者は、上記の出願資格のいずれかに該当するもので、本研究科入学時に既に就業しているか又は入学直後に就業することが見込まれる者とする。

② 臨床系学科目を志望する者は、歯科医師免許証(医師免許証)を有するか、歯科医師国家試験(医師国家試験)に合格することが望ましい。

3.出願手続等
(1)出願期間
前期令和6年9月17日(火)~10月16日(水) 17 時必着
後期令和7年2月6日(木)~3月6日(木)17 時必着
(2)出願書類及び検定料

入学志願者は、下記の書類を提出すること。
郵送の場合は、必ず「書留」とし、封筒に「大学院・(歯)入学志願書在中」と朱書すること。

入学願書本研究科所定用紙
成績証明書出身大学(学部)長の発行するものただし、本学卒業(見込)者は不要
志望理由書本研究科所定用紙
卒業(見込)証明書本学卒業(見込)者は不要
写真(3枚)出願前3か月以内に撮影したもの
上半身正面脱帽(縦3cm×横2.5cm)、裏面に氏名を記入し、1枚は入学願書に貼ること。
入学検定料40,000円
郵送の場合は、現金書留で送付すること。
受験票送付
返信用封筒
受験票の郵送を希望する者は、定形封筒に宛先を明記し、定形郵便・速達・簡易書留料金を含む切手を貼ったものを同封すること。
承諾書社会人特別選抜出願者について、受験および就学を事業主等が承諾するもの
(様式任意)
ただし、本学臨床研修歯科医師として入学を志願する者は不要
就業又は就業見込証明書社会人特別選抜出願者について、事業主等が証明するもの(様式任意)
(3)出願書類の提出先

〒020-8505 盛岡市内丸19番1号
岩手医科大学歯学部教務課(019-651-5111 内線 #4118)

4.試験期日および試験会場
<一般選抜>
期日区分試験科目時間試験会場
前期:令和6年10月26日(土)
後期:令和7年3月18日(火)
筆記試験外国語(英語)9:00~10:50歯学部
第一志望学科目11:00~12:30
第二志望学科目13:30~15:00
面接試験 13:30~歯学部

[注意]

<社会人特別選抜>
期日区分試験科目時間試験会場
前期:令和6年10月26日(土)
後期:令和7年3月18日(火)
筆記試験外国語(英語)9:00~10:50 歯学部
第一志望学科目11:00~12:30
小論文13:30~14:30
面接試験 14:40~歯学部

[注意]

5.受験票

受験票は、必ず試験場に持参すること。

6.合格者の決定と発表
(1)合格者の決定

筆記試験、面接試験、成績証明書及び志望理由書を総合して判定する。

(2)合格者の発表
前期令和6年11月 6日(水)
後期令和7年 3月21日(金)

各日とも歯学部掲示板に掲示するほか、本人には、合格通知書及び入学手続書類を送付する。

7.学納金
授業料425,000円年額
施設整備費300,000円入学時のみ。
(本学卒業生は免除する)

(1)入学年度の授業料は、初回(入学手続時)と二回目に分割納入することができる。

(2)次年度以降の授業料については、二回に分割納入することができる。

(3)授業料分割納入の場合は初回 512,500円(施設整備費を含む)、二回目 212,500円を納入する。

8.入学手続

合格者は、下記の期間において、学納金を納入の上、入学手続書類を歯学部教務課に提出すること。

前期令和6年11月 6日(水)~11月12日(火)
後期令和7年3月21日(金)~3月27日(木)
9.奨学金制度
日本学生支援機構大学院奨学金月額 122,000円
岩手医科大学大学院奨学金月額 25,000円

※その他奨学金制度…岩垂育英会奨学金(月額 50,000円)、モリタ奨学金(月額 30,000円:給付)

10.その他

(1)受理した出願書類及び入学検定料は、いかなる事由があっても返還しない。

(2)入学試験に関する照会及び入学願書の請求は、歯学部教務課宛に行うこと。郵送により入学願書の請求を行う場合は、必ず返信用封筒(角形2号、宛先明記、定形外郵便・速達料金を含む切手を貼付)を同封すること。

(3)本学臨床研修歯科医師として社会人入学を志願する者の就業見込証明書については、歯科医師臨床研修に関する誓約書(写し)をこれに代えることができる。

(4)出願に際し提出された個人情報については、機密保持の基準にしたがって厳格に取り扱い、合否の判定にかかわること、合格通知の発送、入学後の学籍情報以外の目的には使用しない。

(5)前期試験に合格し入学手続きを完了(学納金納入)後、やむを得ず入学を辞退する場合は、納入金を返還しますので、令和7年3月27日(木)午後 5 時までに「入学辞退届」と「学納金等返還願」を提出してください。

分野紹介

口腔解剖学

藤原 尚樹 教授

機能形態学分野では生命科学の根幹を念頭において、医歯薬連携で臨床にも積極的に参画できる解剖学を目指しています。教室では細胞培養、器官培養、移植などの技術と形態学的、組織化学的あるいは分子生物学的手法を適切に組み合わせながら、主にマウスの歯を材料に歯根形成メカニズムにフォーカスして研究を進めています。これまで歯根形成を誘導する組織として知られるHertwig上皮鞘 (HERS) の形成はサービカルループから星状網と中間層が消失することが必要であり、上皮成長因子シグナリングがその調節に関わることを報告しました。また、HERSによる歯根形成過程をていねいに観察した結果、まず内外2層の上皮細胞シートのうち外層の細胞増殖が優位になることでその伸長が生じること、またその次のステップとして起こる歯頸側での細胞シートの断裂には上皮間葉転換が関わる可能性があることを報告してきました。さらにこれらの事象はインスリン様成長因子(IGF-I)や肝細胞成長因子などにより調節されていることなども明らかにしました。さらに最近IGF-Iはセメント質形成やMalassezの上皮遺残の形成にも重要な役割を果たすことも分かってきました。これからも1つ1つの発生現象について形態学的手法を中心にていねいに観察しながら歯根形成のメカニズムを解明していこうと考えています。

マウス臼歯歯胚を用いた歯根形成のメカニズムに関しての列挙するテーマに対して、以下の手法で研究を進めています。形態学的手法としては通常のパラフィン切片、特殊なフィルムを使った未脱灰歯胚の凍結切片による解析、免疫組織化学、免疫組織化学染色を施した光顕標本を電子顕微鏡の反射電子像で捕らえて観察するアレイトモグラフィー法など、培養系としては細胞培養の他に独自に開発した歯根形成に特化したオリジナル器官培養法、さらに腎被膜下への移植実験系、PCRなども含めさまざまな方法を組み合わせて研究を構築しています。

  1. Hertwig上皮鞘の分化メカニズムの解明
  2. 歯根の伸長メカニズムの解明
  3. 歯根の分岐メカニズムの解明
  4. Hertwig上皮鞘の断裂メカニズムの解明
  5. セメント質形成に関わる調節因子の解明 6.マラッセの残存上皮の形成メカニズムについての研究

学部学生への教育は人体解剖学と歯の解剖学を担当していますが、研究は歯の歯根形成に関わるさまざまな調節メカニズムの解明に取組んでいます。形態学的な手法を中心に据え、分子生物学的な手法なども取り入れ適切に組み合わせて、ていねいに研究を進めています。歯根形成の時期は、すでに歯冠の硬組織、周囲の歯槽骨が形成されているため、これまで人工的な環境下での実験が難しい領域でした。そのためまだまだ解明すべきことが多く残されています。その一端を解き明かすべく、ぜひ一緒に研究しましょう

口腔組織学

原田 英光 教授

発生生物・再生医学分野の教室員は、教授(1)・講師(1)・助教(1)・大学院生(2)・技術員(1)の現在6名です。昼食時には一つのテーブルに集まって、和気あいあいと談話を楽しみながら食事をするアットホームなグループです。我々の分野は、発生学や組織学総論・各論、口腔組織学の講義・実習を行っています。組織学とは人体の微細構造や機能、性質を顕微鏡レベルで探究する学問で、個々の細胞から、細胞集団としての組織、さらには組織が組み合わさって形成される器官へと、これらの一連の流れを見据えた人体の成り立ちを教えています。研究もこれを基本として、狭い研究手法にこだわらず、細胞培養、器官培養、遺伝子改変マウスなど、多彩な技術を駆使して人体全体を捉えた研究を目指します。

器官培養系を用いた歯胚の形態形成メカニズムの解明や先天性遺伝子疾患に着目した歯と歯周組織の発生機構の解明と再生への展開、さらには歯科再生医療の実現を目指した技術開発などです。最近はiPS細胞から歯を作る研究も行っています。

<歯の発生の分子機構の解明と再生医学への展開>

1.組織培養とイメージング技術を用いた歯胚の細胞分化についての研究

(1)歯の発生におけるシグナリングに関する研究

(2)歯根形成の分子機構に関する研究

(3)組織工学的手法を用いた歯と歯周組織の再生に関する研究

2.歯科再生医療に向けた基礎研究

(1)培養細胞を用いた骨の再生医療への検討

(2)安全性の高い細胞培養法の開発と臨床に向けた基礎研究

(3)iPS細胞を用いた歯の再生に関する研究 3.動物実験モデルを用いた先天性歯科疾患の原因究明と治療法の開発

教授を筆頭に、我々皆がグローバルな意識を持つことが大切だと考え、他大学や海外との共同研究は積極的に取り組んでいます。できるだけ幅広い技術や考え方を取り入れることが、夢の歯の再生医療を実現させる近道と考えています。我々の研究室は、国際的にも知名度のあるラボであり、大学院生も世界的な研究をリードする一員としての意気込みで研究に取り組んでいただきたいと思います。特に大学院生は、国際学会での口頭発表を目標に英語によるプレゼンテーション力の向上を目指します。

口腔生理学

黒瀬 雅之 教授

口腔を構成する器官は、センサである受容器からの情報を受け、消化管の入り口として食べ物を咀嚼し、唾液を分泌しながら食塊を形成して嚥下に至る役割を担っています。円滑な咀嚼運動を遂行するのは、上位中枢によって制御された咀嚼筋によって構成される顎運動です。病態生理学分野では、この円滑な顎運動の制御を遺伝子改変動物を活用した行動解析研究並びに免疫組織学的手法を用いて解明しております。特に、顎口腔系でみられる不随意運動としてジストニアに注目し、研究機関との共同研究を行っております。さらに、病態生理学分野では、日常臨床で生まれたニーズに応じた機器開発を、共同研究企業と一緒に行い、知財を獲得しながら上市を目指した研究開発を行っております。

  1. 遺伝性ジストニアの病態解明に向けた遺伝子改変動物を用いた基礎研究
  2. 粘度を簡易的に計測可能な粘度計の開発
  3. 社会性行動に異常をきたす疾患に関する研究
  4. 人工知能を活用した歯科臨床技能評価システムの開発
  5. 多軸触圧センサを活用した自転車競技技能向上システムの開発

生理学は、生体が有する機能とそれを支える仕組みを明らかにする学問です。その過程で、様々な手法を使って検討していきますが、「考える」ことがとても重要な学問でもあります。生体の不思議を解き明かしながら、医療人としての論理的な思考を身につけて下さい。その手伝いを我々にさせて頂ければ幸いです。

口腔生化学

石崎 明 教授

生化学は細胞の分子組成、生体成分の化学反応、生体化学反応の調節を研究する学問です。また、生化学の中で重要な位置を占める分子生物学は遺伝子の構造、機能、調節を明らかにする学問です。特に、歯科医学においては、口腔領域の物質の構造と機能を学び、口腔組織の機能を分子レベルで把握します。

口腔組織由来細胞ならびに骨髄由来細胞を用いて細胞内シグナル伝達系を中心に研究を行い、口腔組織をはじめ全身の各組織再生や各種疾患発症の分子機構の解明を目指した研究を進めています。

<現在進めている具体的な研究項目>

  1. 靱帯由来細胞の増殖・分化の制御機構の解明(TGF-βスーパーファミリーとFGFファミリーの相互作用を中心に研究する)
  2. 骨髄由来間葉系幹細胞の経血管ホーミングメカニズムの解明と、ホーミング先での増殖、分化制御メカニズムの解明
  3. 骨髄由来破骨細胞前駆細胞の経血管ホーミングメカニズムの解明と、ホーミング先での増殖、分化制御メカニズムの解明
  4. 線維素溶解系が関与する骨代謝機構の解明
  5. 口腔腫瘍細胞の増殖、分化および細胞死の制御機構の解明
  6. 口腔扁平上皮がん細胞の移動、浸潤および転移とその制御機構の解明
  7. 口腔扁平上皮がん細胞における上皮間葉転換の制御機構の解明

学部学生時代から、医療に役立つ大発見をしてみたいと思っている人は、医・歯・薬の専門分野に関係なく、ぜひとも一度、こちらの教室に遊びに来てください。みなさんの先輩の大学院生の面々が、教科書に載るような大発見を目指して日々頑張っています。また、我々は、大学院修了時に各自が独立して研究を発案・進行できる力を身につけられることを目標にして指導しています。さらには、大学院修了後も、臨床や基礎の現場で最先端の歯科研究に興味を持ち、独自の研究を続けていけるように指導していきたいと思います。将来的には、基礎と臨床が融合し、教室間や学部間の壁のない横断的な研究・教育活動ができたらと思い、全教員が一丸となって頑張っています。ご来訪をお待ちしています。

口腔病理学

入江 太朗 教授

病理学は病気の原因やその成り立ちを科学的に理解するための学問です。伝統的には病理学は形態学を主な解析手段としてきましたが、今日では様々な解析手法を用いることにより病気の本質が分子レベルで明らかにされています。当講座では、口腔顎顔面領域の疾患の病因および病態の解明とそれに基づく新たな診断・治療法の開発を目指して研究を進めています。

  1. 唾液腺腫瘍の組織発生機構の解明
  2. 唾液腺腫瘍の多様性獲得機構の解明
  3. 歯原性腫瘍の新たな遺伝子診断システムの構築
  4. 癌化及び癌の浸潤・転移に関わる新規マーカー候補の探索
  5. 亜鉛を介した腫瘍組織発生の制御機構の解明
  6. 創傷治癒過程における間葉系幹細胞制御機構の解明

上記の研究テーマについて、形態学的手法(免疫組織化学的手法、超微細構造学的手法、レーザーマイクロダイセクション法)、細胞培養法、分子生物学的手法、オミクス解析、遺伝子工学的手法や遺伝子改変マウスの作製などを研究テーマに合わせて行っています。

生命科学研究を行う際には何らかの「異常」を観察する場合に、「百聞は一見に如かず」である「形態学的観察」が重要であることは今も変わりはありません。病気における形態学的な変化を日常的に経験し、それらを記述する言葉をたくさん蓄積してきた学問が病理学です。病理学は研究にも臨床にも役立つ「強力なアイテム」になります。病理学は臨床と基礎の橋渡しを担う役割がありますので、基礎生命科学の新たな成果を個々の症例・疾患にフィードバックすることも大切です。将来臨床医を目指している方も基礎医学研究者を目指す方も一度病理学に触れてみませんか?

口腔微生物学

石河 太知 教授

分子微生物学分野では齲蝕や歯周病をはじめ種々の口腔疾患について、原因細菌の性状および病原性、さらに発症機序を正しく理解することで、病因論に立脚した治療法・予防法を構築することを目標としています。

  1. 口腔レンサ球菌の多機能性タンパク質の病原因子としての役割
  2. 口腔細菌の耐酸性機序(酵素)が歯周炎や齲蝕等の疾患へ果たす役割
  3. 歯周病原性細菌による味覚受容体の発現と全身疾患への関与
  4. 口腔細菌叢のdysbiosisが局所および全身疾患の発症に及ぼす影響
  5. 口腔細菌のdpp4の全身疾患への関与
  6. 微生物代謝産物が歯周炎や齲蝕等の疾患へ果たす役割
  7. 菌体成分による生体応答性に及ぼす金属材料(成分)の影響

上記テーマについて、細菌が産生する生理活性物質や酵素の精製、性状解析を細菌学的および生化学的手法で行い、また、それら細菌由来ビルレンス因子の生体への応答性を培養細胞や実験動物を用いて遺伝学的、免疫学的手法および分子生物学的手法により検討しています。さらに、最先端の知識・技術を駆使して生命科学としての口腔微生物学・免疫学を構築するとともに、次代を担う学生を育んでいきたいと考えています。

口腔微生物学・免疫学の領域でも病因や発症機序が分からない疾患が未だ多く存在し、それらを解明して世界に発信すべく研究に取り組んでいます。今まで世界中の誰もが知らない新事実を一緒に見つけてみませんか!?

歯科薬理学

中村 正帆 教授

薬理学は薬物がどのように生体に作用するかを追究し、生命現象や病態への理解を深める学問領域です。新たな治療薬や治療方法を開発する基盤としても重要です。

ChemogeneticsやOptogeneticsを用いて、対象とする神経細胞や神経回路の生体機能における役割を追究しています。

  1. 全身麻酔薬の作用機序に関わる神経回路の同定と機能解析
  2. 周術期認知機能障害に関わる神経回路の同定と予防法の基盤開発
  3. 睡眠覚醒に関わる神経回路の同定と機能解析
  4. ヒスタミン神経系を標的とした創薬と疾患モデルへの適応

一緒に楽しく研究しましょう!領域を超えた共同研究も大歓迎です!
いつでもお気軽に研究室にお越しください。

歯科理工学

武本 真治 教授

医療工学講座での研究は、医療を発展させるための多くの材料、器械、技術に関するテーマを対象としています。歯科医療の領域で具体的に言えば、日常用いる修復材料、補綴材料、歯科矯正材料、接着材の物性、機器の機能から材料の安全性評価、歯科再生医療に関するものまで、歯科医療に関わる全てが歯科理工学の研究の対象です。矢巾キャンパス移転に伴い医学、薬学分野との連携も重視しています。

より進化した歯科治療材料の設計・開発・評価と再生医療の進歩を支える技術・生体材料の創製の2本柱。どちらもこれからの歯科医療で欠くことはできません。

  1. 各種歯科材料の物性評価および開発
  2. 生体組織再生のための細胞誘導法および足場材料の開発
  3. 歯科金属材料の組織と機能の解析
  4. 歯科生体材料の表面特性・機能の解析

上記の基本方針の上に、日々新しい技術を吟味し、よりよい医療材料・器械への要望に耳を傾け、研究を進めています。

このようなテーマを、好奇心と柔軟な頭脳で更に大きく展開させてくれ、新しいアイディアで歯科医療材料・技術を大きく改革するテーマを生み出すのは若い世代の方々です。高機能歯科材料の創製、バイオマテリアルと生体との相互作用、歯科医療支援技術の革新―夢のある研究に一緒に取り組んでみませんか。 大学院で探究心を磨き、新しい発見の喜びを知る。医療工学講座は、それをサポートします。 いつでも気軽に訪ねて来てください。

法歯学・災害口腔医学

熊谷 章子 教授

法歯学そして災害口腔医学とは、歯学部で6年間学んだ知識と、臨床経験から育まれる判断能力を駆使し、多岐にわたる領域を網羅しながら日本のみならず世界中の人たちの安心安全に貢献するための学問です。

  1. エックス線画像を使用した身元不詳者の法医学的年齢推定
  2. 顔貌の三次元画像による法医学的個人識別
  3. 安定同位体比による死者の生前居住地推定
  4. 災害対応者のためのバーチャル訓練教材制作
  5. 災害犠牲者身元調査のためのITシステム導入

法歯科医学的な科学的根拠に基づく犯罪捜査への協力、身元不詳者をその人の帰りを待つ人に無事送り届けるお手伝い、災害被災者・犠牲者とその遺族への歯科医師による対応の充実、そして国際社会の一員として、どこの、いかなる災害にも備えるため、皆さんの知識と能力を発揮してみませんか?

予防歯科学(含 高度臨床歯科医育成コース)

岸 光男 教授

予防歯科は集団を対象とする地域口腔保健学と個人を対象とする臨床予防歯科学に大別されます。前者に関する研究としては10年間、被災地で行った口腔保健に関する調査活動の結果から、大規模災害と復興状況が口腔の健康に及ぼす影響等を分析しています。後者に関しては、主として放射線療法・化学療法を用いる周術期患者を対象に、口腔合併症である口腔粘膜炎の発症予測と予防することで周術期の口腔並びに全身のQOL低下を防ぐことを目的とした臨床研究を行っています。さらに、高齢者の口腔状態を悪化させる要因の1つである口腔カンジダの抑制効果を持つ口腔保健用食品の開発のため、高齢者施設等において介入研究を行っています。さらに奥羽大学との共同研究で、根面齲蝕の再石灰化を促進する口腔保湿剤や義歯安定剤の開発を行っています。

  1. 被災地住民の口腔内状況と口腔関連QOLに関する研究
  2. 周術期の口腔粘膜炎の関連要因と予防法に関する研究
  3. 抗真菌効果のある保健用食品の開発に関する研究
  4. 口腔微生物と口臭ならびに口腔内状況に関する研究
  5. 歯質の再石灰化を促す口腔ケア用品の開発に関する研究

上記の研究内容に関連した研究計画法、実験手法、データ解析法を指導しています。

現代の歯科医師には、従来の歯科治療だけでなく、高齢者の健康維持や全身疾患治療時の患者のQOL低下の防止、大規模災害被災地における口腔保健管理といった、新たな役割が期待されています。しかしそれらに対する科学的知見の集積は乏しく、現状把握による健康問題の明確化、健康問題と関連する要因の追求、問題解決方法の開発といった、口腔医学の課題は山積しています。過去数十年、予防医学の成果により、齲蝕や喪失歯は見事に減少しています。しかし歯科医師が研究すべき対象はますます増えており、とくに罹患率が高い歯周病や、誰もが経験する「老い」に関しては、治療医学に増して予防医学への期待が高まっています。当分野では、研究手技のみならず、データからその背後に隠れた関連を見いだす統計学的手法も専門としており、それを身につければ日常臨床のなかでも研究を継続することが可能です。知的好奇心旺盛な方、人間が大好きな方、目に見えないことを大切にする方、みな大歓迎です。おそらく、自分の新しい可能性に気づくことができる分野です。

歯周療法学(含 高度臨床歯科医育成コース)

八重柏 隆 教授

当分野では、歯周病を口腔内常在菌による感染に伴う炎症性病変として捉え、歯周組織および歯髄への疾患病態を「細胞生物学研究」と「臨床疫学研究」の両面から解明することを目指しています。さらに歯周病によって失われた歯周組織の再生を獲得するための研究も行っています。

細胞生物学研究では、慢性歯周炎や歯髄炎の病態解明のために、炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)が骨芽細胞、破骨細胞、あるいは線維芽細胞などに及ぼす作用を調べ、歯周・歯髄組織で繰り広げられるサイトカインネットワークを解明します。臨床疫学研究では、関連の医科領域との共同研究によって、糖尿病患者や癌患者、あるいは呼吸器疾患患者を対象に、微弱で持続的な炎症病巣である慢性歯周炎の罹患による全身疾患への悪影響を調査します。

  1. 歯周疾患の再発と長期的予後に関する研究
  2. 歯周組織再生材料の臨床応用に関する研究
  3. 歯周病原性細菌の分子生物学的解析に関する研究
  4. 歯髄細胞と炎症性サイトカイン、再生に関する研究
  5. 全身疾患と歯周病との関連に関する研究
  6. 歯周治療の評価に関する研究

当分野では歯周治療の研修も併せて実施します。また、日本歯周病学会認定医・専門医の取得を目指します。

う蝕治療学(含 高度臨床歯科医育成コース)

野田 守 教授

う蝕治療学分野では、保存修復学と歯内療法学を担当しています。保存修復学では虫歯や、磨耗、外傷によって歯の硬組織に生じた欠損を、コンポジットレジン(高分子材料)、セラミックス、金属などによって歯の形態と機能を回復する方法や、近年注目されている歯の漂白(ブリーチング)につい修得できます。歯内療法学では、歯髄疾患、根尖性歯周疾患、特に歯科用顕微鏡を用いた、歯内治療について修得できます。

今日の一般歯科診療で広く用いられているコンポジットレジンについて、

  1. コンポジットレジン生体親和性について
    コンポジットレジンからの微量溶出成分の周囲組織への長期的影響について細胞内の防御機構にいかに影響を及ぼすかについて分子生物学的手法を用いて研究を行っています。
  2. 歯質接着性のメカニズムの解明
    象牙質への接着メカニズムを形態学的、理工学的に検討し、より確実に長期間安定した接着力を得られるコンポジットレジンの開発の基礎となる研究を行っています。
  3. 歯の漂白について
    歯の漂白効果についての臨床研究を本学倫理委員会の許可のもと行っています。

【指導内容】

上記1〜3について、実験計画の立案、実験手技、データ解析、プレゼンテーション資料作成、プレゼンテーション、論文作成について指導を行います。臨床では、総合歯科において外来診療を通じて、保存修復、歯内療法を主として、歯科内科と協力のもとに全身疾患との関わりを考慮しながら、より安全に歯科治療ができる歯科医師としての能力が身につくように指導します。

齲蝕治療学分野の大学院では、研究はもちろん保存治療を主とした歯科治療を修得します。歯科保存学会専門医の資格を取得できます。保存治療は歯科治療の基本をとなる重要な治療です。大学院でこの保存治療をしっかりと身に付けることはこれからの皆さんの歯科治療の礎となるもので、非常に有意義なものです。研究成果の発表はIADRをはじめとした国際学会や国際誌を中心に、国内では歯科保存学会を中心に発表を行います。何事にも疑問を持ち、積極的に解決していく方を歓迎します。

口腔外科学(含 高度臨床歯科医育成コース)

山田 浩之 教授

口腔外科学教室は昭和40年に開設され、昭和48年に口腔外科学講第一講座(平成21年に顎口腔外科と改称)と口腔外科学講第二講座(平成21年に歯科口腔外科と改称)の2講座となって以来、口腔外科の教育、診療、研究を2つの講座が担当してきましたが、本年(2012年)4月に顎口腔外科学分野(旧口腔外科学講第一講座)と歯科口腔外科学分野(旧口腔外科学講第二講座)が統合されて、新しく「口腔顎顔面再建学講座 口腔外科学分野」となりました。 口腔外科学分野では、口腔外科的疾患ならびに口腔内科的疾患を研究対象として、基礎系講座や他の臨床系講座と連携しながら、基礎的、臨床的研究を行っています。

現在行っている主な研究テーマ、あるいは今後実施予定の研究テーマは下記の通りです。

  1. 口腔癌の基礎的・臨床的研究
    ・口腔癌の微小転移に関する研究
    ・口腔癌の動注化学療法に関する研究
    ・口腔癌の生物発癌に関する研究
  2. 口腔粘膜疾患の基礎的・臨床的研究
    ・口腔前癌病変の発症原因・機序の解明のための基礎的研究
    ・口腔扁平苔癬の発症機序解明と治療法の開発のための研究
    ・口腔粘膜疾患と微量元素との関連についての研究
    ・口腔粘膜疾患と老化に関する研究
  3. 組織再生の研究
    ・Tissue engineering による顎骨再生の研究
    ・創傷治癒に関する基礎的研究
  4. 先天異常に関する研究
    ・唇顎口蓋裂胎内手術に関する基礎的研究

人体はまさに宇宙です。口腔はその一部をなす小宇宙で、口腔にはまだまだ、はるかな未知の世界が広がっています。近年は、患者様が歯科医療に求めるニーズが変化して、歯だけでなく口腔全体を診る「1口腔単位の歯科治療」、患者様の全身状態を把握し適切に対応できる「安 心・安全の歯科治療」、高度で先進的な歯科治療が求められ、歯科医療における口腔外科の必要性、重要性が一段と増しつつあります。口腔外科学を専攻して、口腔の未知の世界に向かって、またよりよい歯科医療を目指して一緒にチャレンジしてみませんか。

冠橋義歯・口腔インプラント学(含 高度臨床歯科医育成コース)

今 一裕 准教授

歯科補綴学講座は、令和6年度から新たに統合新設された新しい講座です。より体系的かつ専門性を深めるため、「歯科補綴学講座 有床義歯・口腔リハビリテーション学分野 および「冠橋義歯・口腔インプラント学分野」へ講座・分野構成の変更をいたしました。冠橋義歯・口腔インプラント学分野は、主に冠橋義歯を用いた機能回復治療の冠橋義歯補綴学と、インプラント治療による咀嚼機能、形態の回復を専門的に学究する分野となります。また、顎顔面再建後のインプラント治療も積極的に行っています。

患者さんの口腔機能と形態の維持、改善を通して、国民の健康長寿に寄与すること目的とし、そのために必要な研究課題の追求とEBMに基づく治療医学の確立、さらにそれらを実践し国民の負託に応えられる歯科医師の養成が当分野の使命であると考えています。

  1. 審美修復、歯科材料、デジタルデンティストリー
    ○高齢者の口腔と有床義歯床用材料の関連
    ○チタンインプラント表面処理法の開発
    ○セラミッククラウンの色調構築によるカラーマネージメントシステムの確立
    ○審美補綴、CAD/CAMシステム、光学印象
    ○キャストフリーデンティストリーの臨床応用範囲の拡大
  2. 歯科インプラント治療
    ○インプラントを用いた固定性補綴による機能回復
    ○インプラントオーバーデンチャーによる口腔機能改善
  3. 顎機能障害の病態生理と治療、スポーツ咬合学
    ○顎機能障害の疫学的研究・顎関節症・咬合障害の分析・評価・治療法
    ○スポーツ選手に対する歯学的サポート
    ○携帯型バイオフィードバック装置の開発と臨床応用
  4. 顎口腔機能の分析・評価・リハビリテーションと口腔ケア
    ○新しい顎口腔機能(咀嚼・嚥下・発音・咬合)の分析・評価法
    ○インプラントを応用した顎顔面補綴
  5. インプラント・口腔再生医学
    ○硬組織(骨)・軟組織(歯肉上皮)の再生、誘導
    ○インプラントに関する臨床研究
    ○インプラント周囲炎に対する治療法の検討および患者特異的に発現を示す遺伝子の解析

デジタル化かつ高度化し、より多様化がすすむ歯科診療の最先端を目指し、さまざまな学究活動をしています。当分野では、このような時代の変化に対応できる、人間性豊かな歯科医療者、教育者、研究者を育成することを目標としています。
また、年齢を問わず、噛む、話すといった機能の回復に加え、審美的な回復も行うことで、国民の「健康長寿」「アンチエージング」「QOLの向上」にいかに寄与するかを分野の目標として掲げ、分野員一同、日々精進しています。

有床義歯・口腔リハビリテーション学(含 高度臨床歯科医育成コース)

小林 琢也 教授

歯科補綴学講座は令和6年度に新たに統合新設された新しい講座です。より体系的かつ専門性を深めるため「有床義歯・口腔リハビリテーション学分野」と「冠橋義歯・口腔インプラント学分野」を設け、講座・分野構成の変更をいたしました。有床義歯・口腔リハビリテーション学は、主に床義歯を用いた形態回復治療の有床義歯補綴学と摂食から嚥下機能までを管理治療する口腔リハビリテーション学を専門的に学究します。

高齢者にとって歯の喪失による咀嚼困難や摂食嚥下機能の低下は、全身機能の低下に繋がります。誰もが生涯にわたり、食べたい物を口から食べて日常生活を楽しむことを望んでいると思います。当分野では、口腔の形態再建と機能回復の治療学をEBMに基づいて確立する目的で研究を行っています。

  1. 口腔機能障害が高次脳機能に及ぼす影響
  2. 口腔機能と全身疾患との関連についての解明
  3. Alzheimer病予防と口腔機能との関連についての解明
  4. 不顕性誤嚥を検出のための非侵襲的検査法の開発
  5. 嚥下機能と廃用症候群との関連についての解明
  6. 新しい義歯洗浄方法の開発
  7. CAD/CAMデンチャーの製作法の検討

超高齢社会の現状を鑑み、多様化する高齢者歯科医療に関する教育、根拠に基づく歯科医療の構築が必要です。当分野は人間性豊かな優れた歯科医学者、教育者および高齢者歯科医療に関連する分野における認定医、専門医、指導医を育成することを目指しています。

歯科矯正学(含 高度臨床歯科医育成コース)

佐藤 和朗 教授

当分野は、臨床講座としては歯並びや噛み合わせの不正を改善すること、それに伴う機能的問題を解消することを専門としています。しかし、日々生活している人の口の中で、歯や顎骨を、目的に沿って移動させるということは、考えただけでも困難と思われるでしょう。実際、それには多様な問題が存在するのです。 このため、当分野は臨床と直結した内容の研究を行っております。その中には直接的に臨床的なデータを用いる種類のものと、実験室における種々の素材、動物、組織培養から得られたデータを用いるものがあります。 大学院生は代々、後者のタイプの研究を先輩達から受け継ぎ、基礎講座の強い支援のもとで成果をあげています。

当分野は、矯正臨床の基礎的な問題の研究を継続しています。生体における歯の移動を最良の条件で行うにはいかにすれば良いか、その実験をいかに有効な方法で行うか、こうした地道な研究こそが将来の矯正臨床を支え、発達させるのです。 現在は下記研究が大学院生の研究によって継続されています。

  1. 歯肉および歯根膜脈管に関する研究(構造的に不明な点の多い下顎骨内のリンパ管走行の解明)
  2. 矯正力による生体反応に関する実験的研究(歯の移動に重要な役割を果たす破骨細胞・破歯細胞を制御する因子の動態について)
  3. 赤色蛍光強発現マウスを用いた新しい研究法の開発
  4. 歯の先天欠如に関わる遺伝子解析に関する研究

歯科医師過剰時代と言われる今、患者さんから選ばれる歯科医師であるためには、一つでも専門的分野を持っていることが重要です。歯科矯正学の知識・技術は、単に不正咬合を治療するだけではなく、全身疾患に起因する咬合異常の治療、顎骨骨折における咬合回復、不正咬合によって引き起こされる疾患の治療等を含め、口腔を大きな視点で捉えることができる分野です。これからの歯科界を担う新歯科医師の君たちに、大学院に入学し、歯科矯正学の先端分野を探求しながら、同時に矯正歯科臨床を修得することを提案します。学位取得は研究の専門家としての証、日本矯正歯科学会認定医を取得すれば矯正歯科臨床のプロフェッショナルの証となります。大学院での研究・臨床の研修は、歯科医としての未来に大いに役立つことになるでしょう。

小児歯科学・障害者歯科学(含 高度臨床歯科医育成コース)

熊谷 美保 准教授

小児歯科学は、子どもの歯と歯並びを健全に育成して、永久歯にスムーズに交換させることによって、その子が成人したあとも長く自分の歯で食事を楽しむことができるようにする基礎づくりを行う役割を担っています。人生の初めにきれいな歯並びとむし歯のない口、そしてそれを自分でケアできる習慣を身に着けることができれば、その人の人生に大きなしあわせを与えることになるのです。小児歯科では子どもたちがいかに苦痛なく齲蝕の治療をうけることができるか、その前にどう子どもをむし歯から守るか、さらにどうすれば将来矯正治療を受けずに済ますことができるのかを考えます。 障害者歯科学は、知的あるいは身体、精神的障害によって通常設備の診療所において歯科医療を受けるのが難しい患者(いわゆる歯科的障害者)のために、医学・歯学の知識をひろく用いながら、歯科診療にいろいろ工夫を加えることにより、よりよい患者の口腔状態、ひいては全身状態を目指します。

  1. 齲蝕にならない歯の強化法
    歯質の耐酸性は齲蝕感受性を大きく左右します。むし歯にならない子の歯はとてもツルツルしていて光沢があり、タービンで削ろうと思ってもなかなか削れません。フロロアパタイトが多ければ多いほど歯は溶けにくくなります。結晶性の向上という観点からも、効果的な歯質の強化法を追究します。
  2. 齲蝕にならない細菌叢
    むし歯にもっとも関連のある細菌は言うまでもなくミュータンス菌(MS)です。MSが伝播しにくい細菌叢とはどんな細菌叢なのでしょうか?他のどの細菌が一緒にいるとMSが増えにくくなるのでしょうか?レンサ球菌、歯周病原性細菌そのほか様々な細菌との相互作用を追究します。
  3. 小児の歯周病
    歯周病を起こす細菌の感染はいつごろ起こるのでしょうか?齲蝕原性細菌のような母子伝播が起こるのでしょうか?成人になってからの歯周病を小児期からの対策で予防する方法を追究します。
  4. 小児のいびき・歯ぎしり
    小児にもいびきや歯ぎしりをする子がいます。原因は様々ですが、睡眠時無呼吸や顎関節症、異常咬耗など将来成人になってからも問題となる症状の発端となっている可能性があります。このような病気の将来の予備軍が小児の中にどのくらいいるのか、またそれをいかに予防するかを追究します。
  5. 頭頸部の細胞の情報伝達について
    障害がある人のモデルとして、マウス頭頸部の細胞(唾液腺あるいは神経節)興奮を解析し、病気のメカニズム解明の一助とします。

少子化の時代だからこそ小児を専門とする歯科医が求められるのだと思います。子どもが少ないということは、子どもを大切にそして健全に育てたいという親の気持ちが一人の子どもに寄せられる時代ということです。成人と同じ考え方、治療方針で治療する歯科医院と小児に特化した環境の中で、それぞれの年代の小児にもっともふさわしい対応、処置を行っていく小児歯科とどちらに大切な子どものお口の管理を任せようと親は思うでしょうか?今は人数が少なくて、一般に知られていない小児歯科専門医ですが、今後は欧米でそうであるように小児歯科の専門性が高く評価されるようになるに違いありません。 障害者歯科学は、障害がある人たちにも歯科疾患の治療と予防を行おうという学問です。本当は健常者と同じ治療を、同じ方法で出来ればいいのですが、まず同じ方法でできない場合が少なくありません。また同じ治療のゴールでは、患者に不適切な場合があります。そのようなことを患者一人一人について工夫していると、当たり前と思っていた治療の中に、考えてもみなかった意味が見いだせることもしばしばです。また障害者歯科学では治療と並行して行動管理や全身管理(全身麻酔を含む)が学べます。障害者歯科は大学でしか学べません。歯科医師になりたての一時期、障害者歯科学を通して自分を磨くのはよい経験になると思います。

歯科放射線学(含 高度臨床歯科医育成コース)

田中 良一 教授

歯科医学では、どの分野をとっても放射線などを利用した画像診断は欠くことができません。特に歯は、顎骨という硬組織に囲まれていますので、非侵襲的に病巣を観察し適切な治療を行うためにX線は大変重要なツールです。歯科医には撮影された画像を正確に読影し、適切な診断を下す能力が要求されます。
また、放射線にはその種類ごとに異なる特性があり、これを積極的に生かすことで癌の治療に応用されていますが、遺伝的影響や細胞障害を引き起こす負の側面もあります。特に、妊婦、若年女性、小児においては遺伝的影響や成長への影響が大きく、放射線を正しく使用することが特に重要です。さらに、歯科領域では水晶体や甲状腺など隣接する臓器の組織感受性も十分理解した上で、放射線を有効活用する知識と技術が求められます。
歯科放射線学では臨床歯科医学に関連するX線撮影法や放射線診断学(含む CT, MRI, 核医学)、放射線治療学について学ぶとともに、これらの基礎となる放射線物理、放射線生物学を習得し、医療被曝の在り方や放射線防護についての学びを通じ、適正な放射線の利用および高度な診断・治療技術の取得を行います。

臨床歯科医学に基づくテーマで研究を行っています。

  1. 蓄積された画像データ・レポートデータのメタ解析による疾患の特性や病態,予後の解明
  2. MRI,PET等を用いた悪性疾患の鑑別と特徴抽出
  3. CBCTやCT,超高精細CT等を用いた新たな画像診断法の開発と評価
  4. 血管内治療の応用による侵襲的治療のアウトカムの改善に関する評価

蓄積された膨大なメタデータを利用し、日常診療で生じた疑問に対峙することで新たな研究のシーズを見出し、実際の臨床研究に結び付けてゆく研究プロセスから習得することができます。また、各種画像診断装置を用いた診断技術の開発や前方視的研究にも従事することができます。

歯科放射線学では、最新の画像診断法を支える基礎理論と、次世代の技術革新に対応できる豊かな応用力を身につけた人材を育てることを目標としています。単に知識の数を増やすことより、それらがどのような研究過程で得られ、どのような方法で明らかにされてきたのかを考えることが重要です。探究心があるからこそ研究の楽しさは尽きません。大学院を通し、ものごとを科学的に考える習慣をしっかり身につけていただきたいと思います。

歯科麻酔学(含 高度臨床歯科医育成コース)

佐藤 健一 教授

歯科麻酔学では、口腔外科手術の全身麻酔、全身の病気を有する患者の歯科治療中の全身管理、障害者(児)や低年齢児の歯科治療中の全身管理(精神鎮静法、全身麻酔など)、口腔・顎・顔面の神経痛や麻痺の治療(ペインクリニック)、さらに歯科治療中の偶発症に対する救急処置などについて学びます。 歯科麻酔科では、科学に基づいた臨床実践を基本理念とし、「より安全で、より快適な歯科医療」の実現を目指しています。よって本専攻科では、臨床の場で患者に「安全と快適」を提供するためのエビデンスを構築するための臨床研究、基礎研究を行います。さらに高度臨床歯科医育成コースでは、研究はもちろんのこと、大学院修了と同時に歯科麻酔認定医、さらには数年後の専門医を目指す歯科医師の育成を目標としています。

教室の主たる研究は、基礎的研究として各種麻酔薬の各種平滑筋に対する影響を解明することと、臨床研究として静脈内鎮静法による健忘効果とその回復について解明することです。基礎的研究では、バイオイメージング手法を用いて各種麻酔薬による血管平滑筋の細胞内カルシウムの変化とそれに伴う収縮反応を同時に測定し、その作用機序を解明すべく研究を進めています。また、血管拡張性因子である一酸化窒素(NO)の関わりについても検討しています。さらに、口腔解剖学教室の協力のもと神経ブロックの組織変化とその回復について研究を進めています。臨床研究においては、静脈内鎮静法で用いられるミダゾラム、プロポフォール、塩酸デクスメデトミジンなどの健忘効果について検討し、さらにその回復について機能的MRIを用いた脳画像的解析の研究を進めています。現在、以下のテーマで研究を進めています。

  1. 血管平滑筋に対する局所麻酔薬の作用に関する研究
  2. 血管平滑筋における一酸化窒素の役割に関する研究
  3. 神経関連細胞の細胞内カルシウムイオン濃度変動に関する研究
  4. 末梢神経の障害と再生に関する研究
  5. 精神鎮静法時の脳機能に関する研究

歯科麻酔学の分野は、その奥行きが深く、解明すべく真理がまだまだ残されています。臨床を深めれば深めるほど疑問も湧き上がり、突き詰めてみたいという探究心が掻立てられます。当教室の基本理念である「安全で快適な歯科治療の提供」を臨床の場で実践するだけでなく、そこから湧き上がった疑問を研究で探求し、さらにその結果を臨床に生かすという、まさにダイナミックな臨床、研究を体験しませんか。

歯科内科学

千葉 俊美 教授

高齢化社会に特有な口腔機能と全身疾患の関連について理解するために、嚥下と食道運動機能のメカニズムやPg菌と疾患発生の関与について研究を行っている。

  1. 歯科医療に関わる消化器疾患-嚥下と食道運動機能に関する研究
    高解像度食道内圧検査 (High-resolution manometry:HRM)を用いて嚥下機能と食道運動機能の関係を明らかにする(図1)。
  2. 歯周病原菌P. gingivalis (Pg 菌)と非アルコール性脂肪肝(NAFLD)および膵臓癌に関する研究。
    ①口腔-肝の臓器連関によるNAFLD病態形成を標的としたカルノシン酸 (CA)(図2)の作用機構の解明に関する研究。
    Pg 菌を起因とするNAFLDの発症および進展に対する影響及び作用機序について明らかにし、歯周病原菌に対して抗菌作用を有するCAの口腔細菌を起因とするNAFLDの発症および進展に対する影響及び作用機序について検討する。
    ②Pg 菌をターゲットとする膵臓癌早期診断マーカーの開発に関する研究。
    口腔細菌と膵臓癌の関連(図3)についてのメカニズムを明らかにし、Pg 菌をターゲットとする膵臓癌の早期診断マーカーの開発を目的とする。

図1

図2

図3

内科学の立場からみた口腔・歯科領域の関係について共に勉強し、海外に通用する研究者育成を心掛けたいと思っています。